私が初めて野毛に足を踏み入れたのは21世紀になる少し前、東横線がまだ桜木町まで通っていた頃。野毛を知っていた仕事上の先輩の誘いがきっかけでした。最初に連れていかれた「萬里」で餃子を食べビールを飲み、その後ぶらぶらと通りを徘徊しながら「鳥芳」や「守礼の邦」を飲み歩きました。

ミレニアムで沸き立つ時代に逆行するかのような佇まい。ちょっと草臥れているけれど猥雑な活気があって店がどこも個性的。まるで街全体がひとつの飲み屋のような雰囲気を漂わせていたのです。次の角になにがあるのかわくわくしながら歩いたのを今でも憶えています。ここから私の野毛通いが始まりました。

肉といえば「浜幸」の馬鹿鍋、ロケーション抜群の「ウサギとカメ」、オープンして間もない「キネマ」もお気に入りでした。そして行けば必ず顔を出したのが名物・久仁子ママの仕切る「波之上」。ママの話に耳を傾けながら飲む泡盛はめちゃくちゃ美味しかった。